国産の木材で生活を豊かにする木工アーティスト | 一般社団法人社会貢献推進国際機構

2016.10.09

国産の木材で生活を豊かにする木工アーティスト

日本は木の国です。国土の68%が森林で、日本人は木とともに生活を営んできました。木の家に住み、木の机、木の椅子、木の箪笥や棚に囲まれて生活してきたのです。木の玩具で遊び、木のお椀に木の箸でご飯を食べてきました。木には神が宿るとされ、木に対する崇拝思想もあります。日本人と木とは切っても切れない深い関係があるのです。

しかし、その日本の木が劣勢です。まず、木材以外の素材が圧倒的に優位になってきました。木造家屋の割合も1968年には90%を超えていましたが、2008年には60%を切っています。集合住宅などではかなりの割合が鉄筋コンクリート造りになっています。日常用品も、金属やプラスチックなどの材料が多くなりました。木製の子どもの玩具は珍しくなったくらいです。

しかもその「木」の多くは、海外からの輸入材です。安価な海外からの木材が輸入され、日本の木材の使用は限定的になっています。その結果、日本の山や森は放ったらかしにされ、荒れてしまいました。日本の木材が使われなくなったのです。結局、日本は豊かな森林資源を持ちながら、木材の輸入大国になっています。国内需要の実に約8割が輸入材木です。カナダやアメリカ、ロシア、マレーシアやインドネシア、ヨーロッパなどから日本に輸入されています。

日本の輸入規制は厳しくなく、違法な伐採による木材や木材製品も日本に入っています。ロシアで違法伐採された木材が中国で加工され、学習机や箪笥などとして輸入されている実態があります。海外の乱伐採による木材資源の枯渇を促進し、日本の山が荒れ山になるのを放ったらかしにしている状態です。2016年5月に「合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律」が参議院本会議で可決成立しました。既にグリーン購入法では紙や木材に対して木材の合法性の確認が義務付けられています。日本の新たな違法伐採対策法が成立したことになります。遅かったがまずは第一歩です。

日本の木製家具の文化を守り、育てようとしている木工デザイナーの人たちもいます。一時はそうした手作りの木工職人は消え去る状態にありましたが、日本の木工文化を守ろうとする新たな人材もでてきました。木の温かみと手作りの優しさを活かして、使えば使うほど味わいのある家具が作られています。

その木工デザイナーの一人、油田陽一朗さんを訪れました。三重県津市の里山集落に位置する『家具工房 NEW FOREST』の主です。受注生産を中心に活動を続けています。一つ一つの木製家具の創作に時間がかかるので、大量受注、大量生産はできません。輸入材で大量に生産する大企業のやり方とは一線を画する。お客さんの要望に応えながら国産木材に新たな生命を吹き込んでいく作業です。椅子や机、箪笥などの作品は、一つ一つが1週間から数ヶ月かかります。手間と時間と気使いが大量にかかる作業です。『家具工房 NEW FOREST』には完成品も見たいというお客さんの要望に応えて、2005年にショールームが備えられています。確かに日本の木材ならではの温もりが感じられます。

%e6%9c%a8%e5%b7%a5%e5%ae%b6%e5%85%b7 油田さんは日本の木材の優しさと木工文化の素晴らしさを多くの人に伝えたいという。日本の木材使用からすれば、こうした手作りの木製家具の気の使用量はわずかでしかありません。しかし、日本の木の文化の象徴的な意味があるというのです。資本主義の論理からすれば、割り高の日本の木材を使用して、これだけ時間をかけて一つ一つを手作りする木製家具は効率が悪いのかもしれない。しかしこの効率の悪さの中にこそ、人間的な温かみのある文化が息づくというのです。

日本の山は荒れています。日本の木は見捨てられています。それは日本の心が失われていることにつながるのです。幸いに日本には、手作りの木製家具の文化を守り、育てようとする木工職人、木工アーティストの人ががんばっています。もう一度、木の大切さと木の文化の素晴らしさを見直す時期なのかもしれません。

Top